2020年01月29日

跨線橋の高さ

先日の運転会で小菅氏が製作中の跨線橋を拝見しました。その設置をめぐって、線路を跨ぐ部分の高さをなるべく低くしたいがパンタ付きの車輛は通したい、という方針であることを伝えられました。
運転会当日は、各自の持参したパンタ付き車輛を実際に通してみて高さの状況を調べましたが、車輛限界や建築限界の規定はどうなっているのか、話題に上がりませんでした。そこで資料を調べてみました。

ネット上にもいろいろ出ているようですが、まずは自分の手持ち書籍から引用します。 第一法規発行 運輸省鉄道監督局 監修 「鉄道六法 1978」 からです。古い資料ではありますが、「国鉄時代」の規程がわかります。
車輛限界から先に書きます。

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日本国有鉄道建設規程 第三章 車輛 第一節 車輛限界
第五十六条 車輛ハ左ノ各号ニ掲グルモノヲ除キ直線軌道上正位ニ於テ第四図ニ示ス車輛限界外ニ出ザルモノタルコトヲ要ス
  (各号は掲載省略します)
註 架空電車線ニ依リ電気運転ヲ為ス車輛ノ屋上装置は車輛限界ノ示ス所ニ依リ其ノ基礎限界外ニ出ヅルコトヲ得レドモ架空電車線ニ依ル運転区間以外ノ以外ノ区間ヲ運転スル場合ヲ考慮シテ屋上装置を容易ニ取外シ又ハ集電装置ヲ折畳ミテ基礎限界内ニ収メ得ル構造ト為スベキモノトス

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第四図 車輛限界(単位粍) 〔第五十六条〕

関連して、架線(架空電車線)に関する高さの規程です。

日本国有鉄道建設規程 第四章 電気施設 第一節 電車線路及び饋電線路
第九十一条 電車線の高さは軌条面上五メートル以上五・四メートル以下としなければならない。ただし、隧道、雪覆、跨線橋、橋梁、乗降場上屋庇その他これらに類するもののある場所及びこれらに隣接する場所においては、その高さを四・五五メートル(踏切道における交流の電車線にあっては、四・八メートル)まで減ずることができる。

地方鉄道建設規程 第四章 電気施設 第一節 電車線路及び饋電線路
第六十五条 架空単線式の電車線(鋼索鉄道の電車線を除く。)の軌条面上の高さは、軌間が一・〇六七メートル又は一・四三五メートルの鉄道にあっては五メートル以上五・四メートル以下とし、軌間が〇・七六二メートルの鉄道にあっては五メートル以上五・二メートル以下としなければならない。ただし、隧道、雪覆、跨線橋、橋梁、乗降場上屋庇その他これらに類するもののある場所及びこれらに隣接する場所においては、その高さを走行する車両のうち集電装置を折りたたんだ場合の高さが最高であるものの高さに四百ミリメートル(変電所の饋電側に連絡遮断装置を設け、かつ、いずれの列車又は車両内からも変電所又は電力指令所に連絡通報できる通信設備を設けている鉄道においては、二百ミリメートル)を加えた高さまで減ずることができる。

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762ミリゲージ鉄道の架線高さも5m以上なので、北勢線などでパンタグラフがすごく高く上がっているように見えてしまうのですね。地方鉄道で架空電車線方式の車輛限界や建築限界の図を見つけることができませんでした。

続いて建築限界の規程です。

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日本国有鉄道建設規程 第二章 線路 第四節 建築限界
第十七条 建物其ノ他ノ建造物等ハ建築限界内ニ入ルコトヲ得ズ
第十八条 直線ニ於ケル建築限界ハ第一図ニ依ル

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第一図 建築限界(単位粍)〔第十八条〕

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第一図の凡例です。

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これらによると、国鉄私鉄とも1067mm軌間鉄道の架空電車線は5m以上5.4m以下で、跨線橋下では4550mmまで下げられるということです。跨線橋における建築限界は二点鎖線になるので、高さ5050mmまで下げられるとなります。500mmの間がありますが、架線支持物などのスペースということでしょうか。

さて、そのまま縮尺して模型にすると、架線を張らないでパンタを上げているので、問題が起きることになります。
2020年01月29日 23:00 | コメント(2) | 実物鉄道一般