2019年06月03日

「1/80もHOである」 と 「1/80はHOではありません」
を考える

 Giants of the West と題するブログでゲージや尺度や呼称について話題になっているようです。自分はGiants of the Westさんにはリンク設定をしていないし、自分の所属クラブメンバーで話題になったときなどに訪問して読ませてもらう程度というところです。Giants of the Westのブログ主さんとは大阪合運ではお目に掛かることはありますが、挨拶程度で深い話をしたことはありません。おそらく、こちらのブログは読まれてない可能性が高いと思います。
 Giants of the Westさんのブログに掲載された「Empirebuilder」というお名前の方からのコメントが、クラブメンバーでも話題になっています。遡ると1月頃から続いているようで半年くらいになるのですね。Giants of the Westのブログ主さんはOスケールを主にしておられることは存じておりますが、投稿されたEmpirebuilder氏はHOとHOn3を楽しんで来られたということだそうです。

 Empirebuilder氏のご意見では、NMRA Standardsに準拠することが前提で「1/80もHOであると考える根拠がある」が述べられています。
 この「1/80」が単純な縮尺値と考えるなら、NMRA Standardsにおいて「HO」は標準軌鉄道の模型のNAME OF SCALEなので、模型の軌間は1435mm÷80=17.94mmになります。もし実物1067mm軌間の鉄道を考えるとしても、模型の軌間は1067mm÷80=13.34mmになります。このような縮尺や模型軌間を持つ規格はNMRA Standardsの中に示されていないので、「1/80はHOではありません」になってすぐに終わります。

 ところで、論議になっている「1/80」には「16.5mm軌間の輪軸を使い、車体その他の部分を1/80でつくる車輛模型」という意味で使われている、と理解しています。
各者「1/80」とだけ書いて話が進められていて、とりあえずは通じているようですが、「16.5mm軌間の線路の上に、16.5mm軌間の輪軸を使い、車輪径や軸距、車体その他の部分を実物の1/80でつくる車輛を載せた鉄道模型も、NMRA Standards を根拠としてのHO」なのか、ということになるでしょう。16.5mm軌間となった経緯はいろいろあったわけですが、現在の解釈では、標準軌と呼ばれている4ft8-1/2inch=1435mm軌間の鉄道を、「1ftを3.5mmの割合として模型で作る」ときの軌間として使われるようになったわけです。この割合を3.5mmスケールと呼んでいますね。

 その16.5mm軌間の模型線路を利用して日本でも模型を作ろうということになったわけですが、「1ftを3.5mmの割合として模型を作る」ではなく、標準軌線路を3.5mmスケールで模型化した線路をうまく使って日本の鉄道を表現できるような方法として「16.5mm軌間の模型輪軸を使い、日本の国鉄型実物車輛の軌間以外を1/80でつくる車輛模型」が考え出されたわけです。で、この作り方の模型には何か呼び方をつけることは行われずに、外国型もやる人があるから、というので米国型や英国型も仲間に入れようと、本国で使われているスケールを取り入れ、その上に満鉄などの配慮も入れて、ほぼ同じ大きさになるような仲間全体を十六番と呼ぼう、というのが1942年に提唱されたものです。十六番は「他に良い名前が見付かったら是非お知らせ願いたい。」ということで始まりましたが、その後は他に良い名前を提案されることもなく、提唱者はこの仲間に付けた名前「十六番」を強く押し進めて行きました。しかし、模型の作り方については提唱者の考えが理解されていたにもかかわらず、この仲間に付けた名前「十六番」はあまり定着しませんでした。提唱者は「盛んになればなるだけ日本語の名前がほしい。」ということでしたが、盛んになっていったのは日本型だけで楽しんでいく模型で、しかもそれに日本語の名前ではなく米国型の規格名をつけられることが多くなりました。「16.5mm軌間の輪軸を使い、日本の国鉄型車輛の軌間以外を1/80でつくる車輛模型」には呼称を付けなかったのが大きな影響を及ぼしてきたと思われます。
 さてその「1/80もHO」なのか、ですが、NMRA Standardsで検討する場合、ネット上で参照できる最新版 S-1 General Overview(July 2004版) において、2段落目に、「スケール名、プロポーション、およびトラックゲージはS-1に記載されている」とあります。したがってS-1.1以下にあるGeneralの表がNMRA Standardsとして扱われることになります。次に「スケールモデル鉄道でプロト、標準、ハイフランジの三つのクラスの規格を提供する」とあります。標準クラスの「HO」の規格はS-1.2表(July 2009版)General Standard Scales で提供されています。「HO」には添え字がないので、標準軌鉄道を模型化するときのStandardsであるということでしょう。したがってTRACK GAUGEには、標準軌を3.5mmスケールで模型化したときの軌間となり、Gminとして16.50mm、Gmaxとして17.07mmが掲載されています。この数値を出すための根拠として実物標準軌間と3.5mmスケールから導き出されているといえます。「1ftを3.5mmの割合として模型を作る」が根拠の模型を「HO」と名付けているわけです。したがってS-1.2表のTRACK GAUGEだけを規格とし、それ以外の項目は規格でない、とするとTRACK GAUGEを導き出す根拠がなくなってしまいます。

20190603a.jpg

標準軌でない鉄道を「1ftを3.5mmの割合として模型を作る」場合は添字をつけようということで「HOn3」などと名付けています。実物3ft6inch=42inch=1067mm軌間を模型化するときのNMRA規格はS-1.2においてTTn42が掲載されています。この場合Scale to Footは標準軌用のTTと同じ1/10"です。

20190603b.jpg

ここからは仮説で考えてみます。

 TTn42の表現と同様にすると、HOで実物1067mm軌間の模型化するならHOn42となり、Scale to Footは標準軌用のHOと同じ3.5mmとなるでしょう。標準軌でない1067mm軌間の鉄道を「16.5mm軌間の輪軸を使い、軌間以外を1/80でつくる車輛を載せる模型」にすると、軌間からは「1ftを4.76mmの割合として模型を作る」になり、軌間以外の部分は「1ftを3.8mmの割合として模型を作る」となり、今のところS-1.2にはPROPORTION、SCALE TO FOOTとも記載されていない規格となってしまいます。

PROPOTIONが1:80となるものをS-1.2へ入れるにはHOとOOの間へ3.8mmスケールとして入れることになるでしょう。NMRA Standardsに準拠することが前提で「軌間16.5mmで軌間以外を1/80でつくる模型もHOである」とするならば、3.8mmスケールの値がS-1.2表に入っている必要があると思います。「軌間16.5mmで軌間以外を1/80でつくる模型もHOである」ならAlpha NumericがHOの行を2行にしてScale to Footに3.8mmを入れ、PROPOTIONに1:80を入れ、TRACK GAUGEにはGminとして16.48mm、Gmaxとして16.84mmをいれることになります。
HOですから標準軌鉄道の1/80ということで模型の軌間は17.94mmとなるはずですが、S-1.2表のTRACK GAUGEの規格値とは合わなくなります。
そして実物1067mm軌間の日本型も「軌間16.5mmで軌間以外を1/80でつくる模型もHO」に入れることになるので、S-1.2表に入れるとAlpha NumericはHOn42が入り、Scale to Footに3.8mmを入れ、PROPOTIONに1:80を入れ、TRACK GAUGEにはGminとして16.48mm、Gmaxとして16.84mmをいれることになります。
でこれもHOと呼んでしまうことにするわけで、実物が標準軌でない模型鉄道を添字なしHOで呼んでしまうのなら、NAME OF SCALEの意味づけが混乱するでしょう。

NAME OF SCALE       SCALE              TRACK GAUGE
Alpha    Common/   TO FOOT  PROPORTION  Min  Target  Max
Numeric  Fractional
-------------------------------------------------------------
OO       4.0mm    4.0mm    1:76.2     19.05  19.10  19.61
HO       3.8mm    3.8mm    1:80      16.50  16.54  17.07
HO       3.5mm    3.5mm    1:87.1      16.50  16.54   17.07
HOn42(HO)  3.8mm    3.8mm    1:80      16.50  16.54  17.07


 S-1.2表へ「軌間16.5mmで軌間以外を1/80でつくる模型もHO」を無理にでも入れるとするなら、LSやLSn3と同様に「Varied」を入れることになると思われます。しかし「Varied」であっても標準軌はLSで、3ft軌間はLSn3と分けられているので、やはり実物が標準軌でないものを添字無しで入れてしまうとLSとの整合もとれません。

NAME OF SCALE       SCALE              TRACK GAUGE
Alpha    Common/   TO FOOT  PROPORTION  Min  Target  Max
Numeric  Fractional
-------------------------------------------------------------
OO       4.0mm    4.0mm    1:76.2     19.05  19.10  19.61
HO       Varied    Varied    Varied      16.50  16.54  17.07
HOn42(HO)  Varied    Varied    Varied     16.50  16.54  17.07
HOn3      3.5mm    3.5mm    1:87.1      10.49  10.54  10.77

こうなるとHOはTRACK GAUGEのみの規格となり、ゲージのみの規格となってしまいます。しかもHOがVariedであるなら、HOn3の3.5mmスケールも根拠を失ってしまうことになります。NMRA Standards を根拠にして「1/80もHOである」を云う場合は、S-1.2表にVariedをちりばめた状態になってから、ということになるでしょう。

仮説検討終わり。

現実には「16.5mm軌間の線路の上で、16.5mm軌間の輪軸を使い、軌間以外を1/80でつくる車輛をのせる模型」は今のところ NMRA Standards S-1.2に取り入れられていません。現状はNMRA Standardsを根拠とすれば「1/80はHOではありません」です。NMRA Standards が日本の16.5mm 1/80模型も考慮に入れてくれて、何らかの対応をしてS-1.2を改訂してくれるようにはたらきかければどうにかなるでしょうか。

しかしながら「16.5mm軌間の線路の上で、16.5mm軌間の輪軸を使い、軌間以外を1/80でつくる車輛をのせる模型」はS-1.2表に基づかない模型として現に存在します。したがってNMRA Standards に準拠しない模型として、独自のNAME OF SCALE等を付けて線路輪軸規格も作ればよいと考えることができるわけです。そして「実物1067mm軌間の鉄道を3.5mmスケールで作る模型」もS-1.2表にはありませんので、NMRA Standards に準拠しない模型として、独自の規格を考えるしかありません。「実物1067mm軌間の鉄道を3.8mmスケールで作る模型」もそうですし、「実物1067mm軌間の鉄道を1/45で作る模型」も同様です。

 E氏は「最新の線路、車輪のNMRA規格を元にしている」ということなので、NMRA Standards S-3、S-4のことを考えておられるのでしょう。しかしS-1のことはまったく触れられてないので、NMRA Standards の範囲を限定的に捉えておられるように感じます。S-1.2の中にVariedをバラ撒くような形でなくて、「1/80もHOである」が規格として機能するような表になれば今後の進展があるかなと感じます。

今日はとりあえずここまで。

訂正 2019.06.09
仮説の文章の中で、TRACK GAUGEの数値が間違っていました。下線部をS-1.2表と同じ数値に訂正します。

訂正前、上記文から抜き出し
PROPOTIONが1:80となるものをS-1.2へ入れるにはHOとOOの間へ3.8mmスケールとして入れることになるでしょう。NMRA Standardsに準拠することが前提で「軌間16.5mmで軌間以外を1/80でつくる模型もHOである」とするならば、3.8mmスケールの値がS-1.2表に入っている必要があると思います。「軌間16.5mmで軌間以外を1/80でつくる模型もHOである」ならAlpha NumericがHOの行を2行にしてScale to Footに3.8mmを入れ、PROPOTIONに1:80を入れ、TRACK GAUGEにはGminとして16.48mm、Gmaxとして16.84mmをいれることになります。
HOですから標準軌鉄道の1/80ということで模型の軌間は17.94mmとなるはずですが、S-1.2表のTRACK GAUGEの規格値とは合わなくなります。
そして実物1067mm軌間の日本型も「軌間16.5mmで軌間以外を1/80でつくる模型もHO」に入れることになるので、S-1.2表に入れるとAlpha NumericはHOn42が入り、Scale to Footに3.8mmを入れ、PROPOTIONに1:80を入れ、TRACK GAUGEにはGminとして16.48mm、Gmaxとして16.84mmをいれることになります。

訂正後 下線部訂正
PROPOTIONが1:80となるものをS-1.2へ入れるにはHOとOOの間へ3.8mmスケールとして入れることになるでしょう。NMRA Standardsに準拠することが前提で「軌間16.5mmで軌間以外を1/80でつくる模型もHOである」とするならば、3.8mmスケールの値がS-1.2表に入っている必要があると思います。「軌間16.5mmで軌間以外を1/80でつくる模型もHOである」ならAlpha NumericがHOの行を2行にしてScale to Footに3.8mmを入れ、PROPOTIONに1:80を入れ、TRACK GAUGEにはGminとして16.50mm、Gmaxとして17.07mmをいれることになります。
HOですから標準軌鉄道の1/80ということで模型の軌間は17.94mmとなるはずですが、S-1.2表のTRACK GAUGEの規格値とは合わなくなります。
そして実物1067mm軌間の日本型も「軌間16.5mmで軌間以外を1/80でつくる模型もHO」に入れることになるので、S-1.2表に入れるとAlpha NumericはHOn42が入り、Scale to Footに3.8mmを入れ、PROPOTIONに1:80を入れ、TRACK GAUGEにはGminとして16.50mm、Gmaxとして17.07mmをいれることになります。




タグ:HO NMRA
2019年06月03日 23:00 | コメント(0) | 模型一般
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