2026年02月09日

車輛塗粧の變遷

漆工続き
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ヘラ削りしました。

日本塗料工業史、車両塗装の變遷 続きです。
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第一節 明治時代 大正初期 漆下地ペイントワニス塗粧法

テキスト書き出しします。
1256〜1257〜1258ページ
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4.漆下地ペイントワニス塗粧法
 大正2、3年頃、日本ペイントに手塚千代吉と林静と云う技師が居て客車、電車の外部塗粧の下地塗料に東洋特産の漆下地を使う事を推奨し、日本ペイントで光明漆の商品名で生漆を売り出し、林静が各車輛工場を歴訪し自ら篦を削り錆を練り(錆とは生漆、砥ノ粉、水を練り合せた下地塗料で砥ノ粉箱と云う)車体外部に生地固め漆として生漆に若干の樟脳白油又はテレビン油を混入し、塗布乾燥後、前記砥ノ粉、錆の篦付けを2,3回施し、砥石水研後、中継塗料として「セキハンド」又はセラツクワニスを1〜2回塗布し、其の上へ下地固め塗料を塗り、色下塗、上塗、ワニス塗と云う順序で仕上げ、油性下地が漆下地に置き替える方法で「漆下地ペイントワニス塗粧法」と称するのである。従来外部に現れる木製部品を油性下地で塗粧した場合、日光の直射を受けると時期に依り(梅雨期から9月頃まで)塗粧面に膨れを生じ、剥離の原因に成るのは被塗物である。木材に含有する水分と樹脂が日光直射の熱に依り、表面へ湧出するため塗膜に膨れを生じ、雨水の浸入等にて剥離するのである。此を防止するには水分並に樹脂の湧出を完全に抑え得る生地固め、塗料及び下地が必要である。夫には今までの油性塗料では駄目であつた。生漆の生地固め漆下地の使用にて始めて完全に防止する事が出来、夏季に於ける塗膜の膨張も影を潜めるに至った。

 漆下地ペイントワニス塗粧法
 1. 節焼 トーチランプ等にて節又は樹脂を焼く。
 2. コクソ彫 木の継目等を切開きコクソ漆を込易くする。
 3. 生地固め塗 生漆に10%以下の樟脳白油又はテレビン油を混入する。
 4. コクソ飼込 生漆、コクソ綿、地ノ粉、姫糊、水を練合せパテにしたもの。
 5. コクソ払い コクソの飼込部分を砥石、砂紙等で摩擦する。
 6. 切粉錆付け 生漆、地ノ粉、砥ノ粉、水を練合せた下地塗料で1回ヘラ付けする。(荒地付)
 7. 砥ノ粉錆付け 生漆、砥ノ粉、水を練合せた下地塗料で2回ヘラ付けする。(化粧付)
 8. 砥石水研ぎ 上野砥石、天草砥石等にて水研ぎする。
 9. 中継塗 セキハンド又はセラツクワニスで中継塗を2回する。
10. 下地固め塗 白鉛ペイント堅練、油性ゴールドサイズ、テレビン油で調合した早乾性鼠色ペイント。
是れより前項油性下地の場合の第5項以下の塗粧を行う。
 然し此の方法にも一つの欠点があつた。即ち中継塗料に使用する「セキハンド」は膠水と重クローム酸加里の混入に依って耐水性にしてはあるが、腰羽目板の継目等から雨水が浸入して、其の部分から剥離することが有り「セラツクワニス」を使用したものは厚く塗布すると、日光の直射に依り「セラツクワニス」から膨れ上る事が有つた。漆下地の上へ油性塗料を塗るに、何故中継塗料を使用せねばならぬか。
 漆は漆酸(ウルシオール)が主成分であるから、漆塗、漆下地等の上へ直接油性塗料を塗ると、漆酸の発散に依り、油性塗料が侵されて変色し乾燥しないのである。(瀝青室質、コールタール等の場合も同様)故に雙方を絶縁すると共に、密着させる様、中継塗料を塗布するので有る。
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2.〜8.は今やっている技法手順とほぼ同じです。京漆器では6.の地ノ粉をはあまり使わないようです。漆下地の上に油性ペイントを塗るというのはやったことないので、手板で試してみたいところですね。


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第一節 明治時代 大正初期 漆塗粧法

1258〜1259ページ
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5.漆塗粧法
 下地を漆下地とし上塗に油性塗料を塗る時は中継塗料を塗らねばならない。中継塗料を施せば場合に依り前述の様に膨れ、又は剥離の生ずる恐れが有る。耐久力本意から言えば漆下地の上は漆塗が良いのである。此の意味から鉄道省では木造車外部塗粧法に「漆塗粧法」を実施する事に成った。漆は自ら黒くなる性質だから、別に顔料を混入せずとも生漆の中へ硫化鉄粉等を僅かに入れゝば、化学作用に依り黒変して漆黒に成るのである。従つて色漆を製するには透漆に(透漆と云つても飴色である)顔料を混入して出色するのであるから、室内に置くものには比較的、赤、青等綺麗な色が出るが、車輛の様な風雨に曝し日光に当るものには10%以下の顔料、又はレーキの混入に依つて出色し得る程度のものより使用出来ない。故に鉄道省では新車の場合は深褐色、修理塗替の場合は黒漆塗であつた。省外電車の如く自由な美麗な色彩を好む車輛には適しないので、前述の漆下地ペイントワニス塗粧法又は漆下地エナメルペイント塗粧法より致し方なかつた。

漆塗粧法
 1. 節  焼
 2. コクソ彫
 3. 生地固め塗
 4. コクソ飼込
 5. コクソ払い
 6. 切粉錆付け
 7. 砥ノ粉錆付け
 8. 砥石水研ぎ
 9. 中塗漆塗 黒中塗漆に樟脳白油又はテレビン油混入。
10. 炭研ぎ 朴炭、又は欅炭にて全面水研ぎ。
11. 上塗漆塗 塗立漆、透漆、顔料を練合せ樟脳白油又はテレビン油混入。
12. 標記文字のみラツク塗 標記部分のみ中継塗としてセラツクワニスにて画く。
13. 標記記入 白亜鉛、白鉛ペイントにて記入。

6.漆下地エナメルペイント塗粧法
 ペイントワニス塗粧法とは前述の如く、カラーペイントの上へワニスを塗布したもので有るから、上塗色が上のワニスの着色に依つて相当変化して来る計りでなく、手数が多く掛るので極く少数であつたが、当時輸入されて居たスタンダード会社製オイルエナメル又はベルビンのオイルエナメルを漆下地の上へ、中継下地固め塗を施し、オイルエナメル2回塗布にて仕上りとする「漆下地エナメルペイント塗粧法」であつて、此の方法は大阪の大鉄電車(今の近畿日本鉄道)横浜市電等で採用して居た。

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第一節おわり

いずれにしても工数が大変多く、大きな車体に漆下地塗って乾燥を待つって湿度維持の設備とかも必要だし、どうしていたのか疑問が湧きます。

タグ:塗装 漆工
2026年02月09日 23:00 | コメント(0) | 漆工
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